経営事項審査(経審)とは
建設業法には、「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について、その許可を受けた国土交通大臣又は都道府県知事の審査を受けなければならない。」とあります。
すなわち、一部の軽微な工事を除き経審を受けていないと公共工事の入札に参加できないことになっています。建設業の許可を受けていてもその能力は様々で、中には大規模な工事経験が無い業者もいるかもしれません。従って、建設業者を一律と見なすのではなく経験や資金力などの経営力を総合的・客観的に判断し、状況に応じた工事の発注を行うために経審の制度が設けられています。
評価項目の構成
経営規模(X1、X2)
経営規模を表す指標であり、工事種類別年間平均完成高(X1)と自己資本・利払前税引前償却前利益(X2)の2項目を評価します。
工事種類別年間平均完成高(X1) | 工事種類別年間平均完成高(X1)は、許可を受けている建設業法上の業種(29種類)に区分した直近2年(又は直近3年)についての平均完成工事高より数値を求め、評価テーブルに当てはめて評点を算出 |
自己資本額、平均利益額(X2) | 経営規模評点(X2)は、自己資本、平均利益の金額をそれぞれ評価テーブルに当てはめて点数を算出し、1:1で合算し評点を計算 |
経営状況(Y)
経営状況(Y)は、企業の経営状態を財務諸表に基づいて「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全」「絶対的力量」の4つの観点から評価する項目です。
各財務諸表の科目の数値に千円未満の端数がある場合、千円単位(ただし、会社法で規定される大会社が、百万単位をもって表示した場合は百万円未満の単位は0として計算)をもって計算することとされています。
1.負債抵抗力 | 倒産判別分析から導かれた指標。 過剰債務に対する返済能力不足が直接的な倒産原因となることに着目し、企業の実体的評価を負債への抵抗力の多寡でみる指標。 |
2.収益性・効率性 | 資産・資本の効率性をみる指標と、収益性の代表的に指標。 競争市場から影響を受けやすい「売上総利益(粗利)」と経常的な利益獲得能力を示す「経常利益」。2つの段階利益を利用した指標。 |
3.財務健全性 | 固定資産にあてた健全性と、全体の健全性の2つの視点からみた指標 |
4.絶対的力量 | 絶対額の指標。 比率ではなく、金額実態を分析。現実的なキャッシュフローと利益の蓄積をみる指標 |
技術力評価(Z)
元請のマネジメント能力を評価する観点から元請完工高を評価に加え、技術者数と元請け完工高を4:1で合算し評点を計算します。
建設業種類別技術職員数(Z-イ) | 建設業の工事種類別に技術職員が保有している資格に対しての評価 |
平均元請完成工事高(Z-ロ) | 建設業種類別年間平均元請完成工事高(発注者から直接請け負った完成工事高)により評価 |
社会性等(W)-令和5年1月1日の法改正に対応しました
この項目では、企業が社会的な責任を果たしているか等の観点で評価されます。
令和5年1月1日に法改正が施行されました。法改正の内容を含め、社会性等(W)は次の通りです。
建設工事の担い手の育成及び 確認に関する取組の状況(W1) |
雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入の有無、退職金共済制度・退職一時金制度等への加入の有無などにより評価 令和5年1月1日法改正内容は次の通り。 (1)W1が「労働福祉の状況」から「建設工事の担い手の育成及び確認に関する取組の状況」に変更された (2)W9(若年技術者及び技能者の育成及び確保の状況)がW1の⑦に移動された (3)W10(知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況)がW1の⑧に移動された (4)W1の⑨に、「ワークライフバランスに関する取組の状況」が新設された (5)W1の⑩に、「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」が新設された ※(5)は、令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請で適用されます。 |
若年技術者等の 育成・確保状況(W1-⑦) |
若手の技術職員の継続的な育成・確保、新規の育成・確保に取り組んだ状況による加点措置 |
知識及び技術又は技能の向上に 関する取組の状況(W1-⑧) |
技術者及び技能者の技術又は技の向上の取組の状況を評価 ・技術者が審査基準日以前1年間に取得したCPD単位の平均値により評価 ・技能者が認定能力評価基準により受けた評価が審査基準日以前3年間に1以上向上した者の割合により評価 |
ワークライフバランスに 関する取組の状況(W1-⑨) |
技術者及び技能者の技術又は技の向上の取組の状況を評価 ・技術者が審査基準日以前1年間に取得したCPD単位の平均値により評価 ・技能者が認定能力評価基準により受けた評価が審査基準日以前3年間に1以上向上した者の割合により評価 |
営業継続の状況(W2) | 建設業の許可を受けた日よりの営業年数による評価と、再生企業の場合の減点により評価 |
防災活動への貢献の状況(W3) | 災害時の建設業者の防災活動などについて定めた建設業者と国、特殊法人等、または地方公共団体との間で協定を締結している場合に加点 |
法令遵守の状況(W4) | 営業の全部もしくは一部の停止を命ぜられたことがある場合に減点して審査 |
建設業の経理に関する状況(W5) | 監査の受審状況、公認会計士等の数等により評価 |
研究開発の状況(W6) | 会計監査人設置の場合に限定し、公認会計士協会の指針等で定義された研究開発費の2期平均で評価 |
建設機械の保有状況(W7) | 災害時に使用される建設機械の保有状況により加点される措置 令和5年1月1日の法改正で、「ダンプ」「締固め用機械」「解体用機械」「高所作業車」が追加された。 |
国又は国際標準化機構が 定めた規格による登録状況(W8) |
ISO9001及びISO14001の取得状況による加点措置 令和5年1月1日の法改正で、「エコアクション21」が追加された。 |
総合評点(P)
経審数値の中で総合評点(P)は、発注機関の格付計算の「客観点」となる判定の大きな要素であり、最も重要な数値です。この総合評点(P)は、経審を受審する業種ごとに評価されます。
総合評点(P) = 0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W(小数点未満の端数は四捨五入)
X1:工事種類別年間平均完成工事高の評点
X2:自己資本額および利払前税引前焼却前利益にかかる評点
Y:経営状況分析の評点
Z:技術力の評点
W:その他の審査項目(社会性等)の評点
各項目ごとの評点分布状況
【表All5 各項目ごとの評点分布状況】
X1点
X2点
Y点
Z点
W点
P点
上限値
2,309
2,280
1,595
2,441
2,074
2,160
下限値
397
454
0
456
-2,109
6
ウエイト
0.25
0.15
0.20
0.25
0.15